ピカソの庭

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2010年 10月 02日

秋風一夜百千年

  あんなに暑かった夏は長く居残った印象ではあったけど、9月の1ヶ月ですっかり秋の気候に変わりました。

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 書いておいて更新出来ずに置いていた9月の2回分の文章が消えていました。私のうっかりなんですけれども。

 私はイラストを仕上げる時にも最後はパソコンを使うのですが、そんな時にも保存を忘れがちで「できた」と思ったら、何か起きて消えてしまう事がよくあります。そんなことがよくあるからなのか、そこまで落ち込まずに、また一からやり直すのですが、同じものを思い出して作業してもだいたい違うものが出来上がるのです。

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 この間、慌てて料理をしていて、うっかり指を切りました。時々、小さく切る事はあったものの、あんなに思い切り良く切ったのははじめてでした。ちょっと舐めて、止血していたら止まるだろうと思ったけれど、血は止まらず床にポタポタ、小さな傷なのにこんなに血が出るものかと思いつつ、結局病院に連れて行ってもらって縫ってもらいました。切った時の痛さはほとんど覚えていませんでしたが、縫う時の麻酔が一番痛くてびっくりしました。その後、抜糸もしてもう3週間くらい経つというのに今もまだ元通りという訳にはいきません。切るのは一瞬の事でしたが、治るのには時間がかかるものです。

 数年前、実家を建て直しました。父を亡くして、女ばかりの家族で家の建て直しを計画してから出来上がるまではずいぶん時間がかかったようにも感じましたが、今考えるとあっという間だったようにも思います。特に、長年済んだ木造の長屋はあっという間に数日で更地になり、壊すというのは本当に一瞬の出来事でした。新しい家ができて、1年も住まないうちに、私は嫁ぎまして、結局、新しい家は時々帰る実家になり、嫁ぎ先の古いお寺が新しい家になっていて、夜中に夢に出てくる実家はだいたい建て直す前の古い家だったりしています。

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 消えてしまった文章の1つは「大事」と「大切」についてこの頃考えていたということについて書いていたものでした。

 「大事」と「大切」はほとんど同じように使われもしているけれど、「大事」のほうがより客観的に重要であることに使われ、「大切」の方が私的で、心情的に重んじて丁寧に扱いたいことに使われることもあるようです。
 「大事」は書いて字の如くに大きなこと、重大なこと、ともかく小さい事柄でないこと、時には大問題、一大事な心配な事態にも使います。だから、プラスのイメージもマイナスのイメージもある言葉です。「大事にしといた方がいい人」なんて言うと、ほんとうに大事な人とはまた違う大事な感じがしてきます。
 「大切」の方は「大きく切る」ではなくて、「大いに切迫している」というところから来ていて、つまりすごく身にせまるような大事さです。「大切な命」「大切な人」「大切な本」はそれぞれを「大事」に置き換えたものよりも思い入れと丁寧さを感じるし、かけがえのない特別感が伝わる気がします。よく似た言葉で「親切」や「懇切」があります。でも、「大切」は「大事」より私的な分だけ一方的でもある気がします。「大切」は「大事」よりもともと丁寧だからなのか「お大事に」とは言っても、「お大切に」とは言わないのです。

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 ちなみに「無事」は禅語で、何もないということではなくて、外に向かって求める心を持たず、何にも振り回されないありのままで健やかな状態のことをいうようです。さて、私は外に何を求めているわけでもないですが、いつも今が繋げる先に期待していて、いつも自分が一番よく分からなくて、一番自分に振り回されているのですから、どうにも無事という訳にはいきません。まぁだいたい無事ですけれど。

  私は昔から何かあるごとに自分の心に「今大事な事は?」と問う癖があります。答えは重要ではなくて、そう心に問うことで、身体と心がなんだかしっくりいくのです。たぶん「大事な事は?」と自分に問いかけるほんの僅かな時間を持てていたなら指を切らなかっただろうと思うのです。私にとって大事なことはまず心と身体の真ん中が今とあっていることです。そもそも、私にはそんなに大きい大事はめったにないし、私の本当に大事なものは言葉にならないものです。大事というよりも大切というべきものはもう今持っているものです。大事なもの、大切なものは増えたり、減ったり、形を変えたり、形がなかったり、ともかく時とともに詰み重なって私の側にあり、そのおかげで今の自分が少し理解出来ます。
 
 わざわざ「大事」と「大切」、言葉の意味を考えて使い分けることもなかったのですが、私はめったと「大切」という言葉を使ってこなかった理由を、「大事」と「大切」の意味を考えてみてなんとなくその理由が分かったのでした。

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  2つ書いた文章が無くなって、結局つらつらつらとやり直して、全然違う1つになりました。折々にふいと浮かぶイメージや閃きもその時毎に何かの形にして残さないといつも形には残りません。当たり前にあると思っているものは刹那に形を変えたり、無くしたりするものです。秋はますます深くなり、赤く、黄色く景色は変わっていきます。何事も後回しにせず大事にしたい秋です。
 
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by kunie_foil | 2010-10-02 13:08


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